フィルムカメラって、撮ってから現像するまでが長い。デジタルみたいにその場で確認できないから、何を撮ったか忘れがち。
そんな中で「撮影記録を3年つけ続けている」という人がいると聞いて、話を聞かせてもらった。記録が苦手な自分には、ちょっと信じられない話だったから。
どんな人?
話してくれたのはKさん、30代の会社員。フィルムカメラを始めたのは5年ほど前、中古屋でたまたま手にした古いコンパクトカメラがきっかけだったそう。
最初の2年は撮りっぱなしだったけど、あるとき「このフィルム、いつ撮ったやつだっけ」と現像に出して混乱したのを境に、記録をつけ始めたという。今は撮影のたびに、軽くログを残すのが習慣になっている。
Q:具体的に、何を記録してるんですか?
「そんなに大層なものじゃないですよ」と笑いながら、見せてくれた。
残しているのは、撮った日付、使っているフィルムの種類、カメラとレンズ、それと天気くらい。あとは「だいたいの撮影場所」と、自分なりの手応えを5段階で。
「文章で書こうとすると続かないんですよね。だから選ぶだけ、数字を選ぶだけ、にしてます。スマホでポチポチっと。撮り終わってカメラをしまうときに、もうついでに」
凝った撮影ノートを想像していたから、拍子抜けするくらいシンプルだった。でも、それが続いている理由なんだと思う。
Q:それ、なんの役に立つんですか?
これが意外と効くんです、とKさんは言う。
「フィルムって、現像が上がるまで結果が見えないでしょう。だから記録がないと、なんでこの写真がうまく撮れたのか、逆になんで失敗したのか、まったくわからない」
記録があると、現像した写真と照らし合わせられる。
- このフィルムは曇りの日に相性がいい、とか
- あのレンズは夕方の光がきれい、とか
- 手応えを「5」にした日の写真は、実際あとで見ても良い、とか
「自分の撮影のクセが見えてくるんですよ。次にどのフィルムを買うか、どんな日に持ち出すか、その判断材料になる」
撮影が、毎回ぶっつけ本番じゃなくなる。記録が、過去の自分からのアドバイスになるらしい。
Q:正直、続けるのしんどくないですか?
「しんどくしないようにしてる、が正確かな」
Kさんいわく、記録を完璧にしようとすると必ず破綻するとのこと。最初のころ、撮った場所を住所まで書こうとして、3日でやめたことがあるそうだ。
「だから今は、忘れたら忘れたでいい、って割り切ってます。10コマ撮って記録が2コマ分しかなくても、ゼロよりマシ。そのくらいの気持ち」
サボった日があっても、記録ごとやめたりはしない。手を抜いて続けるほうが、頑張って途切れるよりずっといい、というのがKさんのスタンスだった。
Q:3年続いて、何か変わりました?
少し考えてから、こう答えてくれた。
「撮ること以外も楽しくなった、かな」
撮る、現像する、記録と見比べる。この一連の流れがあると、一本のフィルムを撮り終えるたびに小さな振り返りができる。
「前は撮って終わりだったけど、今は『前回より良くなったな』って思える瞬間がある。それが地味に嬉しくて、また持ち出したくなるんですよね」
記録が、次に撮りに行く理由になっている。続けるための燃料を、自分で作っているような感じだった。
印象に残った言葉
話の最後に出てきた一言が、ずっと頭に残っている。
「記録は、現像を待つあいだの楽しみなんです」
フィルムは結果がすぐ出ない。その待ち時間を、退屈じゃなく楽しみに変えているのが記録だった。何を撮ったか覚えているから、現像が上がる日が待ち遠しい。記録を義務じゃなく、趣味の一部として味わっている感じが、すごく自然だった。
記録が続かない人は、たぶん記録を「作業」だと思っている。でもKさんにとっては、撮影と同じくらい楽しい時間の一部になっていた。
撮ったその場では、たいしたことに思えない。フィルムの種類、天気、ちょっとした手応え。それでも、現像した写真と並べて見返すと、自分だけの傾向が浮かび上がってくる。
選択式と数値で10秒ほどで残せる趣味記録アプリ「コンセキ」なら、カメラをしまうついでに、Kさんみたいな身軽な記録がつけられる。書くのが苦手でも、選ぶだけなら続けられるかもしれない。
現像を待つあいだの、ささやかな楽しみとして。
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