お茶を淹れるのが好き、と言うと少し大げさに聞こえる。
でも、急須にお湯を注いで、湯気がふわっと立つあの瞬間が好きなのは本当だ。きょうはそんな、お茶と一緒に過ごした一日の話。
朝、寝ぼけたまま深蒸し煎茶
目が覚めて、まずやかんに火をかける。顔を洗っている間にお湯が沸く。
朝はあまり頭が回らないので、考えなくていいお茶を選ぶ。深蒸し煎茶。少し熱めのお湯でも、わりと美味しく出てくれる。寝起きの自分にやさしい。
茶葉を入れて、お湯を注いで、30秒くらい。湯飲みに移すと、濃いめの緑色。
「あ、ちょっと渋い」
熱すぎたかもしれない。でも、この渋さが目を覚ましてくれる朝もある。
スマホをちょっとだけ触って、「深蒸し / 熱め / 渋め」と残す。タップ三回くらい。お茶を飲み終わる前に終わる。
昼、急須を出すほどでもない時間
昼は仕事の合間。正直、ちゃんと淹れている余裕はない。
ティーバッグのほうじ茶を、マグカップにぽとん。お湯を注いで、放置。これはこれで好きだ。香ばしい匂いがデスクに広がると、それだけで少し肩の力が抜ける。
記録するほどのことか、と思いつつ「ほうじ茶 / 昼 / ほっとする」だけ書いておく。
あとで見返したとき、こういう何気ない一杯が案外いい思い出になっていたりする。だから、ハードルは下げておく。書きたくない日は書かない。それでいい。
夜、いちばん丁寧になる一杯
夜は時間がある。だから少し丁寧に淹れる。
冷蔵庫にしまっておいた玉露を出す。お湯はいったん沸かしてから、湯飲みに移して冷ます。50度くらい。低い温度でゆっくり蒸らすと、甘みが出る。
蒸らし時間は、ちょっと長めに2分。急須を傾けると、とろりとした濃い緑。
口に含むと、朝とはまったく別の飲み物みたいに甘い。
「これは当たりだ」
うれしくなって、いつもより少しだけ記録を増やす。茶葉の名前、湯温50度、蒸らし2分、味は甘め。星をつけるなら高め。
数字が並ぶと、なんだか実験ノートみたいで楽しい。次に同じ茶葉を淹れるとき、この夜の自分が手がかりをくれる。
一日ぜんぶ記録しなくていい
朝・昼・夜と並べたけれど、毎回きっちり残しているわけじゃない。
書かない日もある。昼を飛ばすこともある。お茶を淹れる気力すらない日だってある。そういう日は、なにもしない。
それでも、ぽつぽつ溜まった記録を後から眺めると、おもしろいことに気づく。
- 同じ茶葉でも、湯温を変えると味の感想がぜんぶ違う
- 自分が「甘め」と感じるのは、だいたい低めの温度のとき
- 渋いと書いた日は、たいてい急いで淹れた朝
お茶を淹れる動作はいつも10秒、20秒の世界だ。だから記録もそれくらいで終わらないと、つり合わない。
趣味記録アプリ「コンセキ」は、茶葉・湯温・蒸らし時間・味を選択式や数字で残せるので、湯気が消える前に入力が終わる。文章を考えなくていいぶん、一杯を味わうことに集中できる。
記録は、お茶を縛るためのものじゃない。淹れた一杯を、もう少しだけ覚えておくための、小さな付箋みたいなもの。
きょうの夜の玉露も、いつか忘れる。でも書いておけば、何ヶ月か先に「あの甘いやつ、もう一回飲みたいな」と思ったとき、ちゃんとたどり着ける。それくらいで、ちょうどいい。
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